松浪光倫建築計画室 松浪 光倫氏|メビック扇町
松浪光倫建築計画室 松浪 光倫氏
「仕事は家に関する何でも屋さんですね(笑)」と語るのは、松浪光倫建築設計計画室の代表、松浪光倫氏。集合住宅や戸建住宅、さらにはリノベーションの設計・監理などの事業を行っている。今回は、建築士になるまでの道のりや、建築士同士が独自のネットワークを創って活動しようとする取り組み、さらには松浪氏自身の家づくりに対する考え方などについてお話をうかがった。
押しかけての居候から、欠かせぬスタッフへ。
"建築"というものを初めて意識したのは、大学進学時だったという松浪氏。
「高校の成績が完全に理系向きの成績で……。でも、理系科目が好きな訳ではなかったんです。そこで、理系で進学可能な学科の中で、最も理系っぽくなかった建築学科を選びました。もちろん当時は建築の知識は皆無でしたね」
減量億ドル産業
大学入学後、建築士になって家を建てたいと考えるようになったが、吹奏楽の部活に明け暮れる毎日。就職活動も行うことはなかった。
「就職は『なるようになるだろう』なんて考えていました。そうこうしているうちに、大学の非常勤講師だった先生の事務所に半ば居座るような形で押しかけて……。バイトじゃなくて、勝手に遊びに行って事務所にいるだけ。当然バイトではありませんから、お金はもらえません。でも毎日いると、いつの間にか仕事を頼まれるようになるんですよ。次第にいないと困るようになって、最終的には給料払うからということで、その事務所に就職することになりました(笑)」
最終的には、その事務所で受注したすべての住宅プロジェクトを監理・担当する役割を担うようになった。
「それでも、やはりずっと独立を目指していたんですね。そこで5年半働いた後に、さらなる成長を目指して独立することにしました」
建築士同士がネットワークして、各人の"色"を鮮明に。
独立に際して、ほとんど準備をしていなかった松浪氏。当然最初の仕事は食べるための仕事を探し、お客様を探すことだった。
「最初は不動産会社や建設会社の下請けとして図面関連の仕事をやっていました。そこで、ある不動産会社から声を掛けてもらい、集合住宅のコンペに参加して受注できたんです。これでようやくスタートだな、という思いでした」
どのように管理する従業員の調査結果を提示しない
現在は、お客様のほとんどが知人の紹介だという。
「いろいろな人と会うことは刺激になります。友達の飲み会に積極的に参加したり、人間関係を広げることは意識していますね」
そんな中で、新たな試みとして建築士同士をネットワークするということにチャレンジしている。
「木造の純和風の家が得意、小さな家が得意、新建材を活用したローコストな家が得意……といった明確な得意技を持つ建築士がネットワークし、それぞれの得意分野にマッチするお客様がいれば、お客様を相互に紹介しあっていこうとしています」
本来であれば建築士同士は商売敵。仲間の建築士にお客様を紹介することで目先の仕事は減ってしまう。しかし、その分野に長けた建築士が設計する方が、お客様の満足度は確実に上がる。これを繰り返すことで、実績ベースで建築士の"色"が明確になり、建築士の将来にとってプラスになると考えている。
「仕事を取りあうのではなくて、お客様をシェアしたい。常にお客様のニーズにあった建築士が担当して、最高の家を作っていかないと、お客様に本当の満足を提供できませんからね」
現在は不定期だが、建築士や家具作家、建材メーカーを巻き込み、家の素晴らしさや材の良さを伝えるワークショップを通じて、この試みを実現させようと動いている。
『小さく創る家』はみんなが幸せになる。
スーフォールズの誤りと欠落
松浪氏が設計する住宅には、どのような思想があるのだろうか。
「できるだけ小さく創るようにしています。でも、お客様のほとんいどが家づくりは一生に一回きり。だから、少しでも大きな家を建てたいとおっしゃられる方が多いんです。でも『小さい=狭い、大きい=広い』という固定概念を捨てれば、狭い方がお得なことが多いんですよ」
『小さく創る』と、同じ予算なら坪単価を上げられため、性能をアップさせたり、本物の材料が使える、メンテナンス費や維持費、税金が安くなる……など、具体的なメリットが多い。それをお客様のニーズと組み合わせるには『小さくする方法』が重要だという。
「家という小さな塊に創る時もありますし、平らに小さく創ることもあります。小さく創っても、狭く見せない、狭く感じないようにするのが建築家の技術であり、腕の見せ所ですね」
技術的な話は割愛するとして、広い家が最高の家ではなくて、住む人が使いやすく住みやすい家が最高の家で、そのために必要なのが、多くの手間とヒアリング。
「図面や模型だけ見ると使いにくいな、と思う家もあるかもしれません。でも、それは住む人の生活スタイルや家に何を求めているかを知らないから、そう判断するだけ。私が創る家は、最もお金が掛かった場所が家ごとに全部違います。誰もが良いと思うような平均的な家は、大手住宅メーカーの仕事領域かもしれませんね」
住む人が楽しくなれば、私も楽しくなる。
建てた後もお客様の負担にならない家を作るのが、自分のポリシーだと語る松浪氏。
「必要な機能を最適な位置に正しく配置しながら小さくまとめていく作業は難易度がかなり高い。しかも、私の設計料は設計した家の面積で決まるので、小さな家を作ると報酬が下がります(笑)。でも、お客様の幸せを考えると、やはり『小さな家』を創りたいんですよね」
最後に将来についてたずねた。
「今後は家の中にコミュニティをどのように作るかが重視されるでしょう。例えば"必ずリビングを通らせる家"ではなくて、"自然に人が集まるようなリビングがある家"が求められます。そんな家をていねいに創って、少しずつ増やしていきたいですね。お手伝いした家が、そこに住む人の生活を豊かで楽しいものにしてくれたら最高です。そうなると、私も幸せな気分になりますから」
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